コンプライアンス違反は複合的な原因の場合も多いのです。違反には必ず何らかの原因が潜んでいます。

コンプライアンス違反に繋がりやすい環境

社員がコンプライアンスの意味や内容を理解していても、環境によってはコンプライアンス違反が起こりやすくなってしまうことが分かっています。

一体どのような環境であることが、コンプライアンス違反に繋がりやすいというのでしょうか。

まずは、社内の人材傾向です。

「自己中心的な社員が社内に多い」ような場合が挙げられます。

自己中心的な考え方は、コンプライアンスの意味を理解していても自分の利益に繋がるのであれば、違反をしても構わないと考える事があります。

例えば、個人単位での業績を重視している(個人業績主義)会社では、良くも悪くも能力のある個人が在籍しているわけですから、チームプレーよりも自己の業績を重視する傾向にあります。また、事業部制などを導入している場合には、自らの事業部の業績を第一に考え、短期的な視点で利益追求を行いやすくなります。

このような、個人業績主義にしても利益追求を強めた事業部制組織にしても、全体最適よりも部分最適(個人最適)を追求することから、会社全体としてはコンプライアンス的に適正ではない行動を起こしてしまうようなケースが目立ってきます。

これは、人の問題(個人的問題)ということもいえますが、そのような組織文化を生み出すに至った社内風土であり、もっといえばそもそもの社内の仕組みにコンプライアンス違反を招きやすいという構造的な問題が潜んでいるということがいえます。

このような環境下では、自己中心的な社員が集まりやすく、むしろそのような能力特性を有していないと社内では生き残っていくことができません。また、もともとはチームプレーに長けていた人材であっても、生き残った結果として自己中心的な人材へと変容してしまい、本人でも気付かぬうちにコンプライアンス違反を犯していた…というようなことも良くある話です。

また、善悪の区別が曖昧な社員が多い場合も、善意で行ったことがコンプライアンス上の問題を生じさせてしまったということもあります。

コンプライアンス違反は、基本的には社員の行動によって生じることがほとんどです。ですから、社員の責任にしてしまうような傾向にあるのですが、これらの事例から分かるように、根本的な問題点は、「会社の方針や仕組みにある」と、考えることもできます。

とはいえ、個人業績主義や事業部制組織を否定しているのではなく、そのような経営システムではコンプライアンス上の問題が生じる可能性が高いということを前提に、対応策をしっかりと取ることが求められているわけです。

そのためには、社員に対するコンプライアンス教育が重要な意味を持つ事となるでしょう。

上層部が強大な権力を持っていると違反が起きやすい

不祥事が起きた際の処分の甘さにも注意が必要です。

処分が甘ければ、不祥事を起こしても問題ないと考えてしまいがちです。

ある社員が会社やお客様のお金を横領してしまったが、それが少額であったため口頭注意で済んだ、というようなことがあった場合、その事実を知った他の社員は、「その程度で済むのか」という認識しか残りません。

10円の万引きに成功すると、次は100円、その次は1,000円、というように金額が上がっていくと言われていますが、人間と言うのは非常に弱い心を誰もが持っている存在です。「口頭注意程度で済む」という事例を一度でも作ってしまうと、それが前例になってしまい、社員もそのレベルで受け止めますし、会社としてもそれを踏襲したような処分に今後もならざるを得ません。その結果、いずれ重大なコンプライアンス違反を招く結果に繋がります。

会社の処分は、法律で言うところの「判例」と同じように、処分される当人のみならず、それ以外の社員全体の行動にも影響を与える、極めて重要なものです。

ですから、企業は不祥事に対して厳しい処分を下すことが求められます。

特に、上層部が強大な権力を持っている企業では、権力者の処分を甘くしたり、内部でもみ消してしまったりという行動を取るケースが多いため、コンプライアンス違反が起きやすいと言われています。

個別の案件ごとに単なる厳しさを示すだけではなく、誰もが適切と感じる納得性や説得性のある処分が求められます。

 

コンプライアンス違反の原因

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